18番発電所

ボードゲームのことを書くよ

2010年以降のBGGランキング100位内のゲームを書き出してみる

 2015年製のゲームのBGGランクイン速度がちょっと異常なんでは…… と呟いてみて調べてみたら結構面白かったので2010年からの6年分を纏めてみた。こういう調査を定期的、定量的に重ねると大変意義深い事業になるようにも思うんだけど、ぼくの場合、思いついた時にやるだけなので、そういう学術的な蓄積は期待できないw あと、基本的にぼく視点でのアングルというか主観的な物語を挟むので書かれている分析はウカツに信じないようにと注記しておくw
 単純に2015年に面白いゲームがいっぱい出たね、というよりは、ランクインの速度がちょっと桁外れなんじゃないの、という方に重きを置いていて「いつものBGGならこういう顔ぶれになるよね」という意味で2014年以前のランクイン作品を並べている。いかにもギークらしいなと感じるのがブラッドレイジだけで、他のギーク臭プンプンなゲームはまだ途上という辺りから2015年の特殊性であったり、あるいは近年のユーザーの増加を感じ取れるのではないかという話。

2015年 8作品
1位 パンデミックレガシー シーズン1
4位 スルージエイジス新版
12位 世界の七不思議対決
17位 コードネーム
21位 ブラッドレイジ
28位 タイムストーリーズ
38位 マルコポーロの旅路
77位 フードチェーンマグネイト

 今最も熱い2015年製ゲーム。注目したいのは上位3作品がどれも続編IPだということ。(スルージエイジス新版は純然たる新版なのでスピンオフ的なパンデミックレガシーや七不思議対決とは若干性格が異なるけども)一昔前まではこうした既存IPの再活用はお世辞にも成功しているとは言いがたかったんだけど(ティカル2とかカルカソンヌ2とか)、近年のパンデミックスピンオフ作品の流行はスピンオフが商売になるほど市場が広がってきたのかなとも感じる。
 つまりユーザーの増大とソフトの増加の混和で、新規ユーザーがゴマンと溢れるソフトを選別するのが困難となり、既存IPの名前を冠したソフトがリーチしやすくなってるんではないかという筋道。
 勿論、パンデミックレガシーも七不思議対決もゲームとして抜群の面白さを備えているからこそBGGの上位にランクインするワケで商業性と面白さは切り分けて考えるべきなんだけど、商業的に成功したからこそ加速度的な票数が得られたという側面もあるので「発売して間もない新作があっという間にBGGランクの上位に」という現象の要因の一つではあると思う。
 ちなみに去年のエッセンスカウトアクションにランクインしたモンバサ、ニッポン、シニョーリエ辺りはまだまだランク100位外を進行中。BGGランキングは本来これぐらいのスピード感が正しいので、もう少し待てば2015年製のゲームのランクインはさらに増えるんじゃないかな。ただ、モンバサ以外はあまり伸び代はなさそう。
 ギーク的にはフォービドゥンスターズ、スターウォーズ:アルマダ、クトゥルフウォーズ辺りがまだまだ伸び代がありそう。こういうゲームが出てくると「ああ、BGGっぽいね」という光景になるかな(それだけ今ランクインしているゲームの得票速度が凄まじいということでもあり)。
 SdJ関連も含めてまだまだユーザーに見出されていないゲームは多いはず。2015年は近年稀に見る当たり年だったのかもしれない。

2014年 16作品
11位 スターウォーズ 帝国の逆襲
23位 デッドオブウィンター
36位 ロールフォーザギャラクシー
40位 パッチワーク
41位 ファイブトライブス
44位 オルレアン
46位 ノイシュヴァンシュタイン城
57位 アルケミスト
59位 レジェンダリーエンカウンターズ
62位 アルルの丘
66位 スターレルム
74位 アルカディアクエスト
81位 宝石の煌めき
87位 インペリアルセトラーズ
89位 ラグランハ
93位 イスタンブール

 ギークの好みと世界的な好みとが交じるとこんな感じになるという好例。SF、ゾンビ、フィギュアが強い2014年はギークの面目躍如の年だ。
 パッチワーク、アルルの丘、スターレルムと言った2人用ゲームが多くランクインしているのも面白い。世界的に2人用ゲームを遊ぶ波が来ているのかも?(と言っても例えばTCGは基本2人用なのでアナログゲーム市場全体では2人用ゲームが主流、という言い方もできる)
 2014年はユーロゲーが弱く、特にエッセン発信のゲームが存在感を示せなかった年でもあって、ユーロゲーの評価は若干弱め。ファイブトライブスはゴールデンギーク賞を受賞するなどしてギーク的には高評価。日本との嗜好の違いが見て取れる。ギークは複雑なアブストラクト風味のゲームも好きだ(ローゼンベルクの諸作を見よ)。ラグランハの人気が本格化したのは2015年に入ってから。
 基本的に新作は評価が高くなるものなので、時間が経過するとマンネリを覚えたり同タイプの新鮮なゲームが出てきて評価が落ち着いていく。なので2014年のゲームが最終的にどのように評価されるかはまだまだ時間をかけてみないとわからない。

2013年 7作品
5位 カヴェルナ
30位 エルドリッチホラー
43位 コンコルディア
50位 ロシア鉄道
58位 ネイションズ
75位 ヴィティカルチャー
91位 ルイスクラーク

 グッと作品数の絞られた2013年。不作だったかと言えばそうでもなくて、ユーロゲーム的には粒が揃っている。要はギークが好きなゲームが少ないというだけの話かもね。ギークの好みは刹那的というか、ランキングをあっと賑わせてスッと消えていくゲームも少なくない。
 ヴィティカルチャーもそうなんだけど、100位ランク外ではユーフォリアやフランシス・ドレイクなどキックのゲームが注目を浴びた年。キック発のゲームはギーク受けはいいんだけど、市場に出回る母数自体は限られるので長期的には沈む傾向があるのかも。
 ぼくの覚えている限りコンコルディアは長い時間をかけてじわじわと評価を上げつつあるゲームで、少なくともKdJノミネート前は2013年のゲームの中でもそれほど評価は高くない方だった。これは間断なく拡張商品を出し続けたことが影響しているのではないかと思う。拡張が続くタイプのゲームは本体の評価が上乗せされる傾向がある。
 まあ、面白いから拡張が出るのであって、この辺は鶏が先か卵が先かという話にもなりかねないんだけど、人気が出る正のループを描けているか、という話はありそう。

2012年 13作品
3位 テラミスティカ
13位 ウォーオブザリング2版
14位 アンドロイド・ネットランナー
18位 ロビンソン・クルーソー呪われた島
22位 ツォルキン
24位 キーフラワー
35位 スターウォーズミニチュアゲーム
37位 ロードオブウォーターディープ
47位 レジスタンスアヴァロン
54位 ディセント2版
64位 シティビルダー
66位 メイジウォーアリーナ
67位 ケメト

 近年最高の当たり年(と勝手にぼくが思っている)2012年からは13作品がランクイン。エッセン発のテラミスティカ、ツォルキン、キーフラワーに好みのもう一つを加えてエッセン四天王と呼び習わす遊びが流行った。マーメス? ギンコポリス? カッラーラ? お好きなものをどうぞ。
 今から振り返るとエッセン発のゲームがとびきり輝いていた稀有な年だったんだけど、4年経った今では残っているユーロゲーは少なくて明暗がはっきり分かれた年だったと言える。まあ、人間は古き良き時代をよりよく覚えているものだけど。結果的にはギーク的色彩の強いゲームのランクインが多い。
 ウォーオブザリングやネットランナー、ディセントは純然たる新作とは言いづらいので若干水増し感はあるんだけども、ドミニオン以降のプレイヤーの人口増を窺わせる。
 ちなみに今では100位ランク外となってしまったが、ラブレターやクーといったフィラーが界隈を賑わせたのもこの年の特徴。ラブレターは最盛期で確か70位くらいまで伸びたと思う。

2011年 9作品
9位 ブルゴーニュ
10位 メイジナイト
15位 エクリプス
49位 トラヤヌス
53位 ゲームオブスローンズ2版
60位 祈り、働け
82位 ロード・オブ・ザ・リングカードゲーム
85位 サマナーウォーズ
88位 村の人生

 村の人生がKdJ&DSPの2冠を獲得したことでユーロのフラグシップに些か不安が募った2011年。その不安がアメゲーとユーロの昇華を予感させる新世代のゲーム、エクリプスへの期待に過剰に転化したという印象がある。
 エクリプスは当時「トワイライトストラグルの牙城を崩すかも!」と期待を抱かせたゲームではあったのだけど、現在では15位に留まる。これはエクリプス自体の限界が露呈したというよりは、エクリプス以降のゲームの進化が著しかった、エクリプスをベースとして新世代のゲームの発展速度が激化したという面も大きかったのではないかと思う。
 9位のブルゴーニュはフェルトの代表的なゲームの一つではあるけども、KdJは推薦リスト止まり、DSPでは世界の七不思議にかち合うなど不運が続いたゲームでもある。数あるフェルトゲーの中でなぜこれ? という疑問には、すなわちギークのダイスゲー大好き属性が見て取れる。
 同じフェルトのトラヤヌスがランクインしている年と考えればフェルトの黄金期の一つと評することもできるだろう。でまあ、フェルトというデザイナーは幾つも黄金期を持っていて、また今後も新たな黄金期を生み出しそうなデザイナーだったりもするのだ。

2010年 4作品
25位 世界の七不思議
28位 ドミナントスピーシーズ
55位 トロワ
94位 ルーンウォーズ

 2010年はちょっと寂しい4作品。まあ、この辺は熱しやすく冷めやすいギークの性向もあるし、2010年以降も新しいユーザーが続々増えているという証左でもある。
 実際のところこの時期の話題の中心は「ドミニオン(2008)の新しい拡張」だったのではないかなあ。ドミニオンフォロワーにリソースが注がれて結果残らなかった年という言い方もできるかもしれない。
 デッキ構築がユーロ的に解釈されるのは2013年を待たなければならないけども、アグリコラ以降のワーカープレイスメントの爛熟期がこの近辺。今からすると粗さを感じさせるところもあるけども、これから何が飛び出てくるのか、新時代の予感を期待させてくれる時期だったような。
 DSPを獲ったのがフレスコだったりもして、やっぱりゲーム好きからすると濃さが物足りない年でもあるけども、2010年前後はユーロとアメゲーが最接近してカオスに満ち満ちた年代だったのだと思う。
[ 2016年05月30日 21:05 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

ぼくはこう読む2016年のSdJ&KdJノミネート発表

 全世界2300人のSdJ予想ファンの皆様、こんばんは! 今年も心ウキウキワクワクぴょんぴょんなSdJノミネートが発表されましたね! はい、そんな皆様とは打って変わって、ぼくはドブ川に浮かぶネズミの死体のような濁った目をしています。

https://www.youtube.com/watch?v=sHi9eGoAnkk

 今や逃げも隠れもできない公開処刑の記録となったテンデイズTVでのドイツ年間ゲーム大賞予想TVですが、いやー…… これは凄まじいですね…… ぼくの友人であるマスクドちゃぶ台氏が声も高らかに自説を開陳しているのですが、まったくもって目頭が熱くなります。一体なぜこんなことになってしまったのか…… 慢心、環境の違い…… シミーズ氏に至っては長い旅に出てしまいました。
 さておき、この記事をご覧の皆様は、自らの死刑執行文書に判を押した彼らほどの蛮勇を抱いて自説を披露することはないにせよ、胸中で大なり小なりSdJの予想をしていたのではないでしょうか。では、その予想はどうでしたか? 当たりましたか?
 概ね当たったよ、という皆様。おめでとうございます。これまでさぞかし予想をハズして来たことでしょうね!
 ……いや、何もこれはケンカを売っているワケではございません。これまでSdJ予想を的中させてきた方であれば、今回のSdJ予想はおそらく当てられない…… 通例、SdJはファンが「そっちじゃねえだろ!」と叫ぶ方向に舵が切られるものなのです。その荒波を乗り越えるには人智を超えた…… オカルトとでも言うべき天啓や直観が必要となるのですが、今回のSdJノミネートはそうした神秘的体験を真っ向から否定するかのような凡俗な内容。荒天かと思ったら晴天だった…… あまりの当たり前感に気が抜けて肩が脱臼しかねないほどです。
 一体これはどうしたことか。今年のSdJはまるで空気が違う。あたかもSdJ審査員全てが秘密裏に暗殺され、知らぬ間に影武者を立てられてしまったかのような…… そんな方針の大転換が見え隠れしています。こんな素直でギークに寄り添うSdJ審査委員会は今まで見たことない…… とまで言ってしまうと大袈裟ですが、まるで20年前の1996年エルグランデ受賞の年に舞い戻ってしまったかのようです。一体SdJの舞台裏で何が起きているのか。私たちにはそれを知る由もありません。

 さて、ここまで前置きが長くなりましたが、ノミネートされたタイトルの数々を見てみましょう。

SdJノミネート
コードネーム
イムホテップ
カルバ

KdJノミネート
スカイ島
パンデミックレガシー
タイムストーリーズ

 いやー、錚々たる顔ぶれですね。えーっと、これDSPでしたっけ?
 正直な話、ノミネートされたタイトル群の品質についてはまっっっっっったく異論はありません。ありませんとも。
 異論はないんですが、だったら今までの選出は何だったんじゃい! と叫びたくなるのも事実ではあります。それほどSdJ審査委員会の選出は迷走しまくりランナウェイだったワケですが、ぼくのような予想屋はその迷走すらも笑いの種として「この壊れたコンパスは西を指すから北に向かうために東へ行こう」みたいな、そういう補正の技術を長年研ぎ澄ませ続けて来たワケですよ。それがいきなり秘密裏にコンパスが修理されてたら、そりゃあ反則だろうがよ……! 間違って東行っちゃうだろ……! しかもよりによって今年やることないだろ……! 来年でも去年でもよかっただろ……! なんで今年なんだよ……! とまあ、若干の私怨も含まれておりますが、まったく審査員の審美眼の変化に戸惑いを隠せないでいるのであります。あーあ、今年は予想当たる人超多そうだなあ! クソっっっっっ! ぼくは「あ、適当だったんだけど予想当たっちゃいました^^」みたいなのが一番ムカつくんですよもおおおおううう!
 悔しい! 予想当たらなくて悔しい! 助けて安西先生!

 ……すいません、ちょっと取り乱しました。つまりそれだけぼくはSdJ予想に心血を注いでいるワケですが、それだけに「予想していた通りだったね」とか後になって初めて言い出す某御大とかホンッッットにイラッ☆とするワケです、が、悔しい! この世界では予想を当てた人間が勝者だ!
 結局のところ何を言っても敗軍の将兵をブルーノ・カタラずという…… ああ、駄目だ、もうギャグのセンスも失われている。いずれにせよ、ダメな予想屋が何言ってもダメなワケですよ。よし、みんな、来年のSdJを予想しようぜ!

 でもまあ、失敗を糧にして明日に向かって走っていかないと来年の予想も覚束ないというか、また同じ失態を繰り返して悔しい思いに苛まれるのは嫌なので、今年のSdJが一体どういう終着駅に辿り着くのか、ノミネートを見て改めて考えてみます。予想を外した後の予想なのでアレですが、死体に鞭打つ結果にならないことを祈ります。

 まずはKdJですが、パンデミックレガシーとタイムストーリーズのナラティブ1回こっきりゲーのダブルノミネート。これには意表を突かれた人も多いのではないかと思います。
 あとスカイ島。スカイ島はまあ、自分……じゃなかった友人も予想しているのでせやなという感じでもあり、まあ、健闘するんじゃないですかね(鼻ほじ)。
 このKdJの見方は2つあると思います。

 「ナラティブゲーが勝つ」
 「もうこれでエクスキューズは果たしたからスカイ島が勝つ」

 おそらく、これまでのSdJの文脈……すなわちナラティブ、あるいはアングル、もしくは物語としては後者の方が納得しやすいようにぼくには思えます。「さすがにBGG1位のゲームに触れないのもなんだし、ノミネートはさせてやったんでこれでええやろ?」という物語ですね。
 まあ、この手法は割とKdJ創設前のSdJによくあったパターンというか、特別賞をわざわざ創設して賞を授与したアグリコラとかケイラスに似たパターンとも言えます。従来のSdJ審査委員会であればそうしたお茶の濁し方もよくあることとして納得できると言えましょう。
 が、今回のノミネート選出を見る限り、SdJ審査委員会に何か変化が見受けられます。今までのやり方とは異なる大きな変化を印象付けようとしているかのように見えるのです。
 となると、SdJ審査委員会の真の狙い、つまり彼らの描くシナリオ、ナラティブとは、ナラティブゲーの選出なのではないでしょうか。それは二重のナラティブ、ドッペルのナラティブです。
 今回、パンデミックレガシーとタイムストーリーズの双方が一挙にノミネートに選出されたことに首を傾げた方は少なくないと思いますが(あと、多分それでDynastiesが弾かれたんじゃないかとぼくは勝手に思ってますが)、この選出はぼくの記憶にある過去の出来事を想起させました。
 すなわちそれは2013年のSdJ。花火が小箱タイトルとして初めて大賞の栄誉を勝ち得た年のノミネート発表です。
 あの年のSdJノミネートの3作とはつまり、花火、アウグストゥス、クウィックスです(……この選出と今年とを見比べてどう思いますかね)。このノミネートが発表された時点でSdJ審査委員会の小箱タイトルへの並々ならぬ熱意を予感した人も多いのではないでしょうか。残念ながらぼくはこの年、テレストレーション本命とか言ってて大外ししたんですけども。
 さておいて、つまり、そういうことです。SdJ審査委員会は「今年のテーマ」なるものを後付で発表したりします。2014年のキャメルアップやコンセプトは「多人数対応のゲーム」というテーマから選出されたゲームだったりもして、そこからキャメルアップがコンセプトや宝石の煌めきを退けて大賞を獲得したことを鑑みれば、SdJ審査委員会の描くナラティブの遂行意思は極めて高いものと推測できます。
 そういう意味で今年のKdJのテーマが「ナラティブゲーム」にあることは疑いようがなく、その中で「じゃあ一体どっちを選ぶんだろう?」とファンを困惑させるための2本選出と考えれば、これはSdJ審査委員会にとってはやり慣れた手口というかある種のお家芸なのであります。これをぼくは「花火メソッド」と呼んでいるのですが、要するにテーマに適合するゲームを1本だけ選出するとあまりにも狙いが明け透けなので、2本選出してそのうち本命の方に賞を与えるという技です。
 今回で言えば本命はパンデミックレガシーでタイムストーリーズはその余録なのではないか。パンデミックレガシーをノミネートに選出するまでの目線の近さがあるならば、賞を与えるのもBGG1位を獲得した歴史的傑作であるところのパンデミックレガシーと素直に考えるのが収まりがつきます。SdJ審査委員会の転向と思わしき真意が奈辺にあるのか、容易には想像がつかないのですが、もしSdJがファンに……ファンをギークと読み替えて貰っても結構ですが、ファンに寄り添うという意志の表明であるならば、やはりパンデミックレガシーに賞を与えるのではないか、とぼくは考えます。それだけの変心をアピールする必要があるのではないかと。
 まあ、ここ数年のKdJはボロクソに言われてきたことは否めないのでいい加減考えを改めたというか脅しに屈したというか、転回があってもおかしくはないですし、KdJの歴史自体がそんなにも長くはないので如何様にでも価値基準を変えられる賞でもあるわけです。なので今回のKdJの結果は今後のKdJの方針を表明する一手になりうるのではないかなと。スカイ島が受賞すればそれはイスタンブール→ブルームサービスから続くSdJ以上DSP未満のラインを死守するという意思表明になりますし、パンデミックレガシーが受賞すればそれは新しい歴史の創造に着手するという意思表示になるのではないかと思います。
 どちらがいいのかはわかりません。ギークの目線で言えば、パンデミックレガシーが受賞して欲しいですが、果たしてそれが長い目で見てボードゲーム業界の未来に寄与するのかどうか、というのは…… まあ、そんなのは言われんでもエライ人は考えてるでしょうし、ぼくがあーだこーだ言うことではなかろうもん、という話です。この3つならパンデミックレガシーなんじゃないの、ってところで次行きましょう次。

 SdJノミネート。対象年齢14歳以上のコードネームを「※ただしSdJ審査委員会は10歳以上だと思うよ」というやり口でねじ込んできました。シミーズさんも言ってましたけどマジでやりやがった……
 つーか1年前に「フヴァチルがSdJ獲るよ」とか言ったらキチガイ扱いされたもんですが、それが堂々とまかり通る辺り、まったく恐ろしい世の中になったもんです。「ワレスがSdJ獲るよ」も今なら相当なキチガイ発言ですけども来年は果たしてどうなっているでしょうか。
 あとはイムホテップ、カルバ、と今年なかなか遊びごたえのある二作。手堅い内容と言えます。なんかこう、物足りないというか「えええええ、聞いたことねええええ!」という未知の選出が紛れていないのはいささか寂しいというか、正直な話、この点に関しては魅力薄というか「だって全部日本に入ってるじゃん!」というのは、数年前に比べて流通が格段に良化した一点をもってしても腐す正当性は一欠片もないんですが、ことロマン主義な予想屋としては「え、なになにそのゲーム? 知らんわー!」という驚きが欲しかったのが本音と言いますか「そういうゲームを伝えてこそだろ!」という意義をSdJには求めていたので、まあ、正直肩透かし感はありますけども、ギークにとっては既知の内容でもゲームを知らない人から見ればどれも等しく知らないゲームであることは間違いないですし、結局これも戯言なんですよね。ハァ。
 受賞ですが、コードネームなんじゃないですかねえ。本来14歳以上推奨で極めて高いプレイングテクニックが要求されるこのゲームを敢えてSdJに持ってきたというのは、やはりこれもSdJ審査委員会の意思表明の発露なのだと受け取りました。が、実際はどれが受賞するかを見てからでないと単なるぼくの勘違いでした、という話にもなりかねないのですが。
 ともあれコードネームSdJ受賞はギーク的には最も納得できる結末でしょうから、KdJ同様にギークに寄せるとすればそれでしょうし、やはり例年通りギークの思い通りにはさせないぜ、ということならカルバないしイムホテップになるでしょう。コードネームはコンポーネントも弱いしなー。
 イムホテップはいいゲームなんですよねー。お仕事の応酬が続くマルチ剥き出しな泥臭いゲームでハッキリ言って今風とは全く対極の位置にあるゲームなんですが、そこも含めてフィル・ハーディングらしいなと思いますし「これが作りたかったんや!」という気概も感じられます。でもまあ、基本的にぼくが遊んで推したタイトルってことごとく受賞を逃すので……
 さっきのナラティブの話をすればSdJのテーマは「ドイツゲームの復権」的なテーマでもおかしくなくて、そうなるとカルバとイムホテップの一騎打ちになる可能性はあります。その場合はカルバかなあ。まあ、その辺は審査員の談話みたいなのが流れてくるとより狙いが鮮明になるんですが、さてさて。
 まあ、SdJはやや混戦模様ではありますが、個人的にはコードネーム。で、KdJ受賞はドミニオン・レガシーですよ。ヴァッカリーノくん、スマンな!


[ 2016年05月23日 22:18 ] ゲーム賞 | TB(0) | CM(0)

蒼猫の巣ゲームオブザイヤー2015 発表!



 先日生放送でお送りしました2015年のベストゲームを選ぶ蒼猫の巣ゲームオブザイヤー2015。当初の予定を割とすんなりぶっちぎって5時間超の長丁場になりましたが、無事完走しきって栄えある2015年ベストを選出することができました。この記事では価値ある一票を投じて頂いた蒼猫の巣の面々のベスト3を振り返り、それぞれの選評を掲載します。放送を振り返る意味でも、途中までしか見れなかった、途中で体力が尽きたという方もぜひご覧ください。

なお、今回投票して頂いた各人の動画をまとめてくださった方がいたので、以下にリンクを貼ります。この人趣味が合うなー、という方の動画を見てみると、さらにアワードが楽しめるかもしれません。
http://www.nicovideo.jp/mylist/54714761


[ 2016年02月04日 20:11 ] ゲーム賞 | TB(0) | CM(0)

蒼猫の巣ゲームオブザイヤー2015のお知らせ

 今年も開催します! 2015年のゲームオブザイヤーはなんだ!?
 沢山の名作、珍作の出揃った2015年を、動画を作るボードゲーム好き、蒼猫の巣のメンバーが振り返ります。



 どうも、蒼猫の巣ゲームオブザイヤーの主催の一人、円卓Pです。
 2016年1月23日(土)夜8時から、蒼猫の巣ゲームオブザイヤー2015をニコニコ動画蒼猫の巣チャンネルにて生放送でお送りします。「2015年に初めて遊んだゲームのベスト3(発売年問わず)」を総勢○○名がピックアップ。どこのアワードにも見られないユニークかつカオスなラインナップをお送りします。

 なお、↑の告知画像を見て気づいた方もいるかもしれませんが、なんと今回の蒼猫の巣ゲームオブザイヤーは東京三鷹のボードゲームショップ、テンデイズゲームズさんの提供を頂いて放送します。番組をご覧頂く皆様への豪華なお年玉を用意して頂いたのでぜひぜひご笑覧頂ければ幸いです。

 ネット上コミュニティ「蒼猫の巣」の選ぶゲームオブザイヤーという体ではありますが、参加者全員で一つのプレイグループやゲーム会を形成、運営しているわけではなく、所在もバラバラ、好みもバラバラ、経験もバラバラ、遊ぶゲームもバラバラであります。なので挙げられるゲームも統一感なんて言葉はブン投げていますし、アワードとして明確に押し出すメッセージ性なんてものは微塵もございません。格式もありません。
 なのでご覧になられる皆様には「蒼猫の巣が選ぶ2015年最高のゲームはなんだ!?」という感じでモニタに食いつくより、「あ、こんなゲームあったよね」「こんなゲームがあるんだ!?」「この人わかってるな~」「このゲーム、地味だけど好きな人がいてくれて嬉しい」みたいな、選者のベスト3から溢れ出す趣きを感じ取って頂ければより楽しめるのではないかなと思います。
 心に引っかかっていたけど買い忘れていたゲームをこの機会に思い出して頂いて、その際にはちょっと一手間テンデイズゲームズさんで検索して頂いてご購入までして頂けると、スポンサー様への面目が立ちますのでなおありがたいです(ダイレクトマーケティング)

 ちなみに去年の結果はこちら
[ 2015年12月31日 21:21 ] ゲームイベント | TB(0) | CM(0)

ここ6年のスカウトアクションを纏めてみる

 6年という微妙な区切りなのは去年のアップデートというだけであまり深い意味はない。敢えて意味を見つけるとしたら2010年の翌年のSdJではKdJが新設され、世界の七不思議が受賞したという一つの節目の年でもあるし、もう一つぼくのボードゲーム歴から追い切れる範囲の限界でもあったりする。2009年2位の権力ゲームってどんなゲームなんですか?

1.54 キーフラワー(2012/1位)
1.64 テラミスティカ(2012/2位)
1.71 トゥルネー(2011/1位)
1.73 ロシア鉄道(2013/1位)
1.84 コンコルディア(2013/2位)
1.87 世界の七不思議(2010/1位)
1.87 アクアスフィア(2014/1位)
1.89 トラヤヌス(2011/2位)
1.9 ラ・グランハ(2015/1位)
1.91 グラスロード(2013/3位)
1.93 オルレアン(2014/2位)
1.94 ギンコポリス(2012/3位)
1.96 イル・ヴェッキオ(2012/4位)
1.96 春秋戦国(2014/3位)
1.98 トロワ(2010/2位)
1.98 アルケミスト(2014/4位)
2.0 モンバサ(2015/2位)
2.0 ニッポン(2015/2位)
2.0 シニョーリエ(2015/2位)

2.02 デウス(2014/5位)
2.04 ナビゲーター(2010/3位)
2.05 エイジオブインダストリー(2010/4位)
2.07 ホームステッダーズ(2012/5位)
2.1 世界の七不思議:対決(2015/5位)
2.1 カウンシル・オブ・ザ・フォー(2015/5位)
2.1 グランドオーストリアホテル(2015/5位)

2.11 オリンパス(2010/5位)
2.12 ニュルンベルクへの始発列車(2010/6位)
2.12 ブリュッセル1893(2013/4位)
2.13 キーウェスト(2010/7位)
2.13 花火(2012/6位)
2.13 ツォルキン(2012/7位)
2.13 カシュガル(2013/5位)
2.15 ロココの仕立屋(2013/6位)
2.16 ムラーノ(2014/6位)
2.17 ディ・シュタウファー(2014/7位)
2.18 ヴィニョス(2010/8位)
2.20 ローマに栄光あれ(2011/3位)
2.2 コードネーム(2015/8位)
2.2 スカイアイランド(2015/8位)
2.2 ミステリウム(2015/8位)
2.2 シェイクスピア(2015/8位)

2.21 スパイリウム(2013/7位)
2.22 電力会社:原始の火花(2011/4位)
2.22 マデイラ(2013/8位)
2.23 フロレンザ(2010/9位)
2.24 ラブレター(2013/9位)
2.24 パッチワーク(2014/8位)
2.26 1655年:教皇がおられます(2010/10位)
2.26 アンドールの伝説(2012/8位)
2.28 ハワイ(2011/5位)
2.30 ウゴ(2013/10位)
2.3 ディスカバリーズ(2015/12位)
2.3 私の村の人生(2015/12位)

2.31 ヘルベチア(2011/6位)
2.32 カッラーラ(2012/9位)
2.33 ゆらゆら海賊船(2012/10位)
2.35 アメリゴ(2013/11位)
2.36 祈り、働け(2011/7位)
2.37 スノードニア(2012/11位)
2.39 ビースティバー(2014/9位)
2.40 炭鉱賛歌(2014/12位)
2.4 セレスティア(2015/14位)
2.41 ラクラク大統領になる方法(2012/12位)
2.42 ラパ・ヌイ(2011/8位)
2.44 アビス(2014/10位)
2.44 雲南(2013/13位)
2.47 エミネントドメイン(2012/13位)
2.48 ギルドマスター(2013/14位)
2.48 ノーティカス(2013/15位)
2.49 サンチアゴ・デ・キューバ(2011/9位)
2.49 コルトエキスプレス(2014/11位)
2.50 ファイブトライブス(2014/12位)
2.51 コニーアイランド(2011/10位)
2.56 海賊と商人(2011/11位)
2.61 サンスーシ(2013年/16位)
2.63 十二季節の魔法使い(2012/14位)
2.66 キングオブトーキョー(2011/12位)
2.75 ダンジョンファイター(2011/13位)
2.75 タシュ・カラール(2013/17位)
2.78 イノベーション(2011/14位)
2.78 おかしな遺言(2011/15位)
2.82 サンマロ(2012/15位)
2.86 フォルトゥナ(2012/16位)
2.92 秦(2012/16位)
2.98 マイルストーン(2012/17位)

 で、纏めるとこんな感じ。今回のスカウトアクションは若干の仕様変更があって小数点第1位で順位を決めるという方式に変更されている。なので去年までのレーティングと比べにくい点はあるのだけど、そういうものだと受け入れるしかない。変更理由を勝手に忖度するならば、小数点第2位なんていう微細な数字で順位の上下が頻繁に発生し、それに一喜一憂するのは傍目にも健全な態度とは言いがたいし、良い影響よりも悪い影響の方が懸念される。なのでこの施策も妥当と言えるのではないかなあと思う次第。
 で、今回のスカウトアクションのキーポイントは2つに絞られる。

・純粋なエッセン新作ではないラグランハのスカウトアクション1位獲得
・上位入賞のレーティングが2014年を下回る

 この2点だ。で、ここからは個人的な感想というか、まったくもって偏った視点での話になるのでそれを理解した上で読んで貰いたい。具体的に言えば「ラグランハ? ってのが1位なんだー?」って人には全く関係ない話で、「えーっ、ラグランハが1位かよ!」の心情がわかる人だけ読んで貰えればいい。そういう意図で書く。
 でまあ、ラグランハの1位獲得。これはもうガッカリ以外のナニモノでもない。ちなみにぼくはラグランハをプレイしたことはないので、ゲーム自体の良し悪しとは全く関係ない。ただただ1000に及ぶエッセン新作の大軍がラグランハ1騎の前に膝を屈するしかなかったという事実に暗澹とした気分を拭えないのだ。
 スカウトアクションの1位作品を2010年から辿れば、世界の七不思議、トゥルネー、キーフラワー、ロシア鉄道、アクアスフィア…… どれもこれも1年間に及んで冠される「エッセン新作」の強者どもをリードしてきた顔役である。
 ……いや、トゥルネーとアクアスフィアは若干怪しいかな…… まあ、2011年と2014年に関しては2011年が異常な年だったことと、2014年もある種の変化の予兆を孕んだ年であったことを例外の理由とさせて貰いたい。2014年については後述する。
 ともあれ、ボードゲーム最大の祭典であるエッセンシュピールには各メーカーがこぞって力作を投入し、今後一年の覇権を争う側面がある。何を持って勝者とするか、何を持って決着と捉えるかは定義が難しいところではあるけども、ボードゲームのシーズンはエッセンシュピールで始まり、エッセンシュピールで終わる。1年に及ぶシーズンの最初の戦いがスカウトアクションであるならば、その1位は最初の勝者と讃えられていいはずだ。
 競馬に例えればスカウトアクションは朝日杯FS(G1)みたいなもので、その後皐月賞(G1)相当の春のプフェファークーヘルを経てダービー(G1)にあたるドイツ年間ゲーム大賞(SdJ、KdJ)に辿り着く。また夏を越えて評価の定まった諸作は秋の総決算、菊花賞(G1)相当のドイツゲーム大賞(DSP)で最後の戦いを繰り広げる。運のいいゲームがSdJを獲り、面白いゲームがDSPを獲るという理屈だ。
 こう書いてみれば競馬がわかる人には諸賞のニュアンスが通じるのではなかろうか。競馬知らん人はしらん。
 ともあれ、スカウトアクションで有望視されたゲームは今後1年のシーズンを先頭を切って戦っていく代表選手となる。この年の出来不出来はさしあたりスカウトアクションの諸作から語られることになるわけだ。
 それにも関わらずラグランハ…… 初版が出たのが去年の秋。今年は重ゲーマー御用達のポルトガル年間ゲーム大賞を獲得するなど既に評価の定まったSpielworxxの作品がなにPD出版に転厩して新馬みたいなツラして混じってんだよお前もう3歳馬だろコラみたいな話だ。
 まあ、ボードゲームは馬と違って年齢を重ねて成長するということはないし、大体この辺はドイツの流通が関わってくる話なのでレギュレーション違反だと声を荒げるつもりはない。むしろ評価されるべきタイミングを逸して不意に脚光を浴びてしまったラグランハのある種の悲運に同情すべきとも思う。
 が、エッセンシュピールというお祭りをそれこそバカになって楽しみたい身としてはこの異分子の存在とその「果たしてしまった」偉業を無視はできない。
 大体、PCに張り付いてスカウトアクションの経過に一喜一憂する輩なんてのはボードゲームへの情熱を著しく拗らせた人種なのだ。真っ当な情熱の持ち主ならその発露としてエッセンに直接向かう。それができない人間が、それでも祭典のリアルタイム感を共有したいがために精一杯足掻いているだけにすぎない。だからこうした感情が全く仄暗いブーイングでしかないことには自覚がある。
 さて、流通に絡むこうした「ダブり」のゲームはラグランハが唯一例外というワケではない。例えば去年はマンハッタンプロジェクトやユーフォリアと言ったアメリカのゲーム、キック発のゲームがスカウトアクションに参戦していたし、2012年5位のホームステッターズは第3版になっての出馬で今更感がメチャクチャ強かった。
 そして、それら諸作と比べてラグランハが異質なのはやはり1位を獲ってしまった結果に尽きるワケで、これが最後に純粋なエッセン新作による逆転劇があればハラハラする名試合を見れたなあという感想に落ち着いたかもしれない。
 なので本当に嘆くべきはラグランハを迎え撃つエッセン諸作の存在感不足であって、ラグランハはその煽りを受けているだけにすぎない。先ほど悲運と表現したのはそういうことだ。
 で、2つ目のポイントに話を移すのだけど、エッセン諸作の物足りなさは数字にも現れている。首位であるラグランハのレーティングは1.9。今年は表記方法の変更があったとはいえ、これは過去6年の中でも首位としては最低の数字で、ラグランハが出版年通りに去年参戦していたら去年1位のアクアスフィアには及ばなかったというシミュレーションにもなる。まあ、年が違えば参加者の層も数も違うので直接比較するのはナンセンスな話だ。今年は票数が出ていないこともあるし。とは言えそんなのにも勝てねーのかよ、という話は残る。
 また、それに続くエッセン新作もレーティング2.0を割り込んでおり、これまた一年の代表作としての勢いとしては疑問符がつく。例年なら2.0を越える作品がもう1つくらいはあるのだけど、それにも至らない。
 割と致命的に感じるのはトップ5の比較で不作を予感してあらかたその通りになった2014年を下回る数字が出ていることで、これは正直ちょっとヤバい。今のところは感覚的な話に留まってはいるけどもBGGのランキングトラッカーが始まれば精査が進むはずだ。

 で、2014年を振り返ると去年は去年で「フェルトが1位かよ!」と叫んでいた記憶がある(ただアクアスフィア自体はぼくは大好きなゲーム)。それも基本的に1位を取るタイプではないフェルトの作品がまさかの1位を取ってしまったことからの2014年諸作の層の薄さへの懸念だったワケだけど、事実2014年シーズンの勝者はドイツゲーム大賞を受賞したマルコポーロの足跡だった。そしてマルコポーロの足跡はエッセン新作ではなく春のニュルンベルク見本市で初出となったゲームで、それがドイツゲーム大賞まで受賞したのは異例とも言える事件ではあったのだけども、それが今年も続く可能性が出てきてしまったのではなかろうか。
 そういう意味では「異変」は昨日今日に始まった話ではなく、ここ数年のボードゲーム界隈でじわじわと顕現している事象だとぼくは考えている。「エッセンシュピールの落日」というと過激に聞こえるかもしれないが、要はエッセンシュピールが唯一無二の至高の座を占めた時代が終わりを告げつつあるのではないか、という話だ。
 近年のエッセンシュピールに集うボードゲーム諸作になぜパンチが足りないのかと言えば、その理由の一つにドイツマーケットの相対的な地位低下が挙げられるとぼくは考える。これは逆に言えば、フランス、アメリカ、日本と言ったドイツに依らないマーケットの成長、増大の裏返しでもある。資料を失念してしまったが、今年のアメリカマーケットは驚嘆する勢いで右肩上がりが続いているし、日本のボードゲーム市場の拡大については皆が実感していることだと思う。スペースカウボーイズの躍進に代表されるフランスの存在感については言うまでもない。
 また、クラウドファンディングなどの小規模出版の興隆もそうした流れに拍車をかけている。ラグランハの初版はアメリカのボードゲームショップ、Funagainがパブリッシャーになったもので、これを国内の例に当てはめるとセイルトゥインディアの製品版をゲームフィールドがパブしたのに近い……と思う。
 そうした多層なマーケットの拡大に反して今年のエッセンシュピールの入場者数は2000人の増加に留まったという。留まった、と敢えて表現する。ゲムマなら2000人の増加はニュースではあるけども、エッセン16万人が16万2000人に増えたのは過去最高の数字という惹句を付け加えたとしても頭打ちを予感させる。展示面積は昨年の58,000㎡から63,000㎡に広がったそうだが、それに見合う結果が出ているのだろうか。この辺りは現地に赴かないとわからない感覚ではあるのだけど。
 そして増大しているはずのボードゲーム人口はどこに吸収されているかといえば、それは世界各地で開催されるイベントに反映されている。カンヌ、ジェンコン、そしてゲムマ。それぞれのマーケットがそれぞれのボードゲームイベントを開催し、それに合わせて新作を制作し流通させる。エッセンシュピールに頼らない独自のマーケットの構築が、相対的にエッセンシュピールの地位低下を招く。自国流通の後、スカウトアクションに集まった時点でそれらのインパクトは既知のものとなっている。ただ、当のドイツ人はそれを知らない。
 コアなボードゲーム好きにとっては既知の作品であるラグランハもエッセンシュピールに集う多くの人々には新鮮に映ったのだ。それは小さな、しかし看過できない齟齬の始まりではないだろうか。
 エッセンを介さないマーケットの拡大が続けばこうしたすれ違いの機会は今後も増え続けるだろう。今は流行の発信源であるスカウトアクションも現状に即した別の優れた指標が現れれば主役から脇役に堕する可能性はある。スカウトアクションの結果を一瞥して「ドイツは遅れてるな」と呟く未来が来るかもしれないのだ。
 スカウトアクションの信頼性…… まあ、スレたボードゲーム好きには鼻で笑われる言葉かもしれないけれど、今なお高い確度を誇るこの指標はドイツのボードゲーム先進国という立ち位置によって保証されてきた側面がある。しかし、時代の変化が進めばいずれはスカウトアクションもドイツローカルな人気投票に成り果ててしまうのかもしれない。どこぞの国の○○ゲーム大賞みたいなもんだ。

 とまあ、個人的な失望から無駄に話を膨らませてきたけれど、結局のところゲームはやってみなきゃわからないワケで。レーティングの話をするなら2012年のツォルキンなんか2.13の7位だし、実際スカウトアクションが正しかったのかそうじゃないのか、それを確かめるのは自分自身だ。駿馬の群れから何が飛び出てくるのか一番ワクワクするシーズンはこれからだし、幸いなことに今回上位入賞したゲームはほぼHJが国内流通を手掛けることになるだろう。やきもきする心配は薄い。
 かくいうぼくもモンバサを遊びたいのでできれば秋ゲムマに間に合わせて欲しい…… と言ってもぼくは秋ゲムマでは出展側なのでスピード勝負になるとまず買えないんだけど……

 あと、ぼくの見る目のなさから考えるとラグランハは傑作なんだと思います。誰か遊ばせて下さい。
[ 2015年10月12日 23:15 ] ゲーム賞 | TB(0) | CM(3)
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