18番発電所

ボードゲームのことを書くよ
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ここ6年のスカウトアクションを纏めてみる

 6年という微妙な区切りなのは去年のアップデートというだけであまり深い意味はない。敢えて意味を見つけるとしたら2010年の翌年のSdJではKdJが新設され、世界の七不思議が受賞したという一つの節目の年でもあるし、もう一つぼくのボードゲーム歴から追い切れる範囲の限界でもあったりする。2009年2位の権力ゲームってどんなゲームなんですか?

1.54 キーフラワー(2012/1位)
1.64 テラミスティカ(2012/2位)
1.71 トゥルネー(2011/1位)
1.73 ロシア鉄道(2013/1位)
1.84 コンコルディア(2013/2位)
1.87 世界の七不思議(2010/1位)
1.87 アクアスフィア(2014/1位)
1.89 トラヤヌス(2011/2位)
1.9 ラ・グランハ(2015/1位)
1.91 グラスロード(2013/3位)
1.93 オルレアン(2014/2位)
1.94 ギンコポリス(2012/3位)
1.96 イル・ヴェッキオ(2012/4位)
1.96 春秋戦国(2014/3位)
1.98 トロワ(2010/2位)
1.98 アルケミスト(2014/4位)
2.0 モンバサ(2015/2位)
2.0 ニッポン(2015/2位)
2.0 シニョーリエ(2015/2位)

2.02 デウス(2014/5位)
2.04 ナビゲーター(2010/3位)
2.05 エイジオブインダストリー(2010/4位)
2.07 ホームステッダーズ(2012/5位)
2.1 世界の七不思議:対決(2015/5位)
2.1 カウンシル・オブ・ザ・フォー(2015/5位)
2.1 グランドオーストリアホテル(2015/5位)

2.11 オリンパス(2010/5位)
2.12 ニュルンベルクへの始発列車(2010/6位)
2.12 ブリュッセル1893(2013/4位)
2.13 キーウェスト(2010/7位)
2.13 花火(2012/6位)
2.13 ツォルキン(2012/7位)
2.13 カシュガル(2013/5位)
2.15 ロココの仕立屋(2013/6位)
2.16 ムラーノ(2014/6位)
2.17 ディ・シュタウファー(2014/7位)
2.18 ヴィニョス(2010/8位)
2.20 ローマに栄光あれ(2011/3位)
2.2 コードネーム(2015/8位)
2.2 スカイアイランド(2015/8位)
2.2 ミステリウム(2015/8位)
2.2 シェイクスピア(2015/8位)

2.21 スパイリウム(2013/7位)
2.22 電力会社:原始の火花(2011/4位)
2.22 マデイラ(2013/8位)
2.23 フロレンザ(2010/9位)
2.24 ラブレター(2013/9位)
2.24 パッチワーク(2014/8位)
2.26 1655年:教皇がおられます(2010/10位)
2.26 アンドールの伝説(2012/8位)
2.28 ハワイ(2011/5位)
2.30 ウゴ(2013/10位)
2.3 ディスカバリーズ(2015/12位)
2.3 私の村の人生(2015/12位)

2.31 ヘルベチア(2011/6位)
2.32 カッラーラ(2012/9位)
2.33 ゆらゆら海賊船(2012/10位)
2.35 アメリゴ(2013/11位)
2.36 祈り、働け(2011/7位)
2.37 スノードニア(2012/11位)
2.39 ビースティバー(2014/9位)
2.40 炭鉱賛歌(2014/12位)
2.4 セレスティア(2015/14位)
2.41 ラクラク大統領になる方法(2012/12位)
2.42 ラパ・ヌイ(2011/8位)
2.44 アビス(2014/10位)
2.44 雲南(2013/13位)
2.47 エミネントドメイン(2012/13位)
2.48 ギルドマスター(2013/14位)
2.48 ノーティカス(2013/15位)
2.49 サンチアゴ・デ・キューバ(2011/9位)
2.49 コルトエキスプレス(2014/11位)
2.50 ファイブトライブス(2014/12位)
2.51 コニーアイランド(2011/10位)
2.56 海賊と商人(2011/11位)
2.61 サンスーシ(2013年/16位)
2.63 十二季節の魔法使い(2012/14位)
2.66 キングオブトーキョー(2011/12位)
2.75 ダンジョンファイター(2011/13位)
2.75 タシュ・カラール(2013/17位)
2.78 イノベーション(2011/14位)
2.78 おかしな遺言(2011/15位)
2.82 サンマロ(2012/15位)
2.86 フォルトゥナ(2012/16位)
2.92 秦(2012/16位)
2.98 マイルストーン(2012/17位)

 で、纏めるとこんな感じ。今回のスカウトアクションは若干の仕様変更があって小数点第1位で順位を決めるという方式に変更されている。なので去年までのレーティングと比べにくい点はあるのだけど、そういうものだと受け入れるしかない。変更理由を勝手に忖度するならば、小数点第2位なんていう微細な数字で順位の上下が頻繁に発生し、それに一喜一憂するのは傍目にも健全な態度とは言いがたいし、良い影響よりも悪い影響の方が懸念される。なのでこの施策も妥当と言えるのではないかなあと思う次第。
 で、今回のスカウトアクションのキーポイントは2つに絞られる。

・純粋なエッセン新作ではないラグランハのスカウトアクション1位獲得
・上位入賞のレーティングが2014年を下回る

 この2点だ。で、ここからは個人的な感想というか、まったくもって偏った視点での話になるのでそれを理解した上で読んで貰いたい。具体的に言えば「ラグランハ? ってのが1位なんだー?」って人には全く関係ない話で、「えーっ、ラグランハが1位かよ!」の心情がわかる人だけ読んで貰えればいい。そういう意図で書く。
 でまあ、ラグランハの1位獲得。これはもうガッカリ以外のナニモノでもない。ちなみにぼくはラグランハをプレイしたことはないので、ゲーム自体の良し悪しとは全く関係ない。ただただ1000に及ぶエッセン新作の大軍がラグランハ1騎の前に膝を屈するしかなかったという事実に暗澹とした気分を拭えないのだ。
 スカウトアクションの1位作品を2010年から辿れば、世界の七不思議、トゥルネー、キーフラワー、ロシア鉄道、アクアスフィア…… どれもこれも1年間に及んで冠される「エッセン新作」の強者どもをリードしてきた顔役である。
 ……いや、トゥルネーとアクアスフィアは若干怪しいかな…… まあ、2011年と2014年に関しては2011年が異常な年だったことと、2014年もある種の変化の予兆を孕んだ年であったことを例外の理由とさせて貰いたい。2014年については後述する。
 ともあれ、ボードゲーム最大の祭典であるエッセンシュピールには各メーカーがこぞって力作を投入し、今後一年の覇権を争う側面がある。何を持って勝者とするか、何を持って決着と捉えるかは定義が難しいところではあるけども、ボードゲームのシーズンはエッセンシュピールで始まり、エッセンシュピールで終わる。1年に及ぶシーズンの最初の戦いがスカウトアクションであるならば、その1位は最初の勝者と讃えられていいはずだ。
 競馬に例えればスカウトアクションは朝日杯FS(G1)みたいなもので、その後皐月賞(G1)相当の春のプフェファークーヘルを経てダービー(G1)にあたるドイツ年間ゲーム大賞(SdJ、KdJ)に辿り着く。また夏を越えて評価の定まった諸作は秋の総決算、菊花賞(G1)相当のドイツゲーム大賞(DSP)で最後の戦いを繰り広げる。運のいいゲームがSdJを獲り、面白いゲームがDSPを獲るという理屈だ。
 こう書いてみれば競馬がわかる人には諸賞のニュアンスが通じるのではなかろうか。競馬知らん人はしらん。
 ともあれ、スカウトアクションで有望視されたゲームは今後1年のシーズンを先頭を切って戦っていく代表選手となる。この年の出来不出来はさしあたりスカウトアクションの諸作から語られることになるわけだ。
 それにも関わらずラグランハ…… 初版が出たのが去年の秋。今年は重ゲーマー御用達のポルトガル年間ゲーム大賞を獲得するなど既に評価の定まったSpielworxxの作品がなにPD出版に転厩して新馬みたいなツラして混じってんだよお前もう3歳馬だろコラみたいな話だ。
 まあ、ボードゲームは馬と違って年齢を重ねて成長するということはないし、大体この辺はドイツの流通が関わってくる話なのでレギュレーション違反だと声を荒げるつもりはない。むしろ評価されるべきタイミングを逸して不意に脚光を浴びてしまったラグランハのある種の悲運に同情すべきとも思う。
 が、エッセンシュピールというお祭りをそれこそバカになって楽しみたい身としてはこの異分子の存在とその「果たしてしまった」偉業を無視はできない。
 大体、PCに張り付いてスカウトアクションの経過に一喜一憂する輩なんてのはボードゲームへの情熱を著しく拗らせた人種なのだ。真っ当な情熱の持ち主ならその発露としてエッセンに直接向かう。それができない人間が、それでも祭典のリアルタイム感を共有したいがために精一杯足掻いているだけにすぎない。だからこうした感情が全く仄暗いブーイングでしかないことには自覚がある。
 さて、流通に絡むこうした「ダブり」のゲームはラグランハが唯一例外というワケではない。例えば去年はマンハッタンプロジェクトやユーフォリアと言ったアメリカのゲーム、キック発のゲームがスカウトアクションに参戦していたし、2012年5位のホームステッターズは第3版になっての出馬で今更感がメチャクチャ強かった。
 そして、それら諸作と比べてラグランハが異質なのはやはり1位を獲ってしまった結果に尽きるワケで、これが最後に純粋なエッセン新作による逆転劇があればハラハラする名試合を見れたなあという感想に落ち着いたかもしれない。
 なので本当に嘆くべきはラグランハを迎え撃つエッセン諸作の存在感不足であって、ラグランハはその煽りを受けているだけにすぎない。先ほど悲運と表現したのはそういうことだ。
 で、2つ目のポイントに話を移すのだけど、エッセン諸作の物足りなさは数字にも現れている。首位であるラグランハのレーティングは1.9。今年は表記方法の変更があったとはいえ、これは過去6年の中でも首位としては最低の数字で、ラグランハが出版年通りに去年参戦していたら去年1位のアクアスフィアには及ばなかったというシミュレーションにもなる。まあ、年が違えば参加者の層も数も違うので直接比較するのはナンセンスな話だ。今年は票数が出ていないこともあるし。とは言えそんなのにも勝てねーのかよ、という話は残る。
 また、それに続くエッセン新作もレーティング2.0を割り込んでおり、これまた一年の代表作としての勢いとしては疑問符がつく。例年なら2.0を越える作品がもう1つくらいはあるのだけど、それにも至らない。
 割と致命的に感じるのはトップ5の比較で不作を予感してあらかたその通りになった2014年を下回る数字が出ていることで、これは正直ちょっとヤバい。今のところは感覚的な話に留まってはいるけどもBGGのランキングトラッカーが始まれば精査が進むはずだ。

 で、2014年を振り返ると去年は去年で「フェルトが1位かよ!」と叫んでいた記憶がある(ただアクアスフィア自体はぼくは大好きなゲーム)。それも基本的に1位を取るタイプではないフェルトの作品がまさかの1位を取ってしまったことからの2014年諸作の層の薄さへの懸念だったワケだけど、事実2014年シーズンの勝者はドイツゲーム大賞を受賞したマルコポーロの足跡だった。そしてマルコポーロの足跡はエッセン新作ではなく春のニュルンベルク見本市で初出となったゲームで、それがドイツゲーム大賞まで受賞したのは異例とも言える事件ではあったのだけども、それが今年も続く可能性が出てきてしまったのではなかろうか。
 そういう意味では「異変」は昨日今日に始まった話ではなく、ここ数年のボードゲーム界隈でじわじわと顕現している事象だとぼくは考えている。「エッセンシュピールの落日」というと過激に聞こえるかもしれないが、要はエッセンシュピールが唯一無二の至高の座を占めた時代が終わりを告げつつあるのではないか、という話だ。
 近年のエッセンシュピールに集うボードゲーム諸作になぜパンチが足りないのかと言えば、その理由の一つにドイツマーケットの相対的な地位低下が挙げられるとぼくは考える。これは逆に言えば、フランス、アメリカ、日本と言ったドイツに依らないマーケットの成長、増大の裏返しでもある。資料を失念してしまったが、今年のアメリカマーケットは驚嘆する勢いで右肩上がりが続いているし、日本のボードゲーム市場の拡大については皆が実感していることだと思う。スペースカウボーイズの躍進に代表されるフランスの存在感については言うまでもない。
 また、クラウドファンディングなどの小規模出版の興隆もそうした流れに拍車をかけている。ラグランハの初版はアメリカのボードゲームショップ、Funagainがパブリッシャーになったもので、これを国内の例に当てはめるとセイルトゥインディアの製品版をゲームフィールドがパブしたのに近い……と思う。
 そうした多層なマーケットの拡大に反して今年のエッセンシュピールの入場者数は2000人の増加に留まったという。留まった、と敢えて表現する。ゲムマなら2000人の増加はニュースではあるけども、エッセン16万人が16万2000人に増えたのは過去最高の数字という惹句を付け加えたとしても頭打ちを予感させる。展示面積は昨年の58,000㎡から63,000㎡に広がったそうだが、それに見合う結果が出ているのだろうか。この辺りは現地に赴かないとわからない感覚ではあるのだけど。
 そして増大しているはずのボードゲーム人口はどこに吸収されているかといえば、それは世界各地で開催されるイベントに反映されている。カンヌ、ジェンコン、そしてゲムマ。それぞれのマーケットがそれぞれのボードゲームイベントを開催し、それに合わせて新作を制作し流通させる。エッセンシュピールに頼らない独自のマーケットの構築が、相対的にエッセンシュピールの地位低下を招く。自国流通の後、スカウトアクションに集まった時点でそれらのインパクトは既知のものとなっている。ただ、当のドイツ人はそれを知らない。
 コアなボードゲーム好きにとっては既知の作品であるラグランハもエッセンシュピールに集う多くの人々には新鮮に映ったのだ。それは小さな、しかし看過できない齟齬の始まりではないだろうか。
 エッセンを介さないマーケットの拡大が続けばこうしたすれ違いの機会は今後も増え続けるだろう。今は流行の発信源であるスカウトアクションも現状に即した別の優れた指標が現れれば主役から脇役に堕する可能性はある。スカウトアクションの結果を一瞥して「ドイツは遅れてるな」と呟く未来が来るかもしれないのだ。
 スカウトアクションの信頼性…… まあ、スレたボードゲーム好きには鼻で笑われる言葉かもしれないけれど、今なお高い確度を誇るこの指標はドイツのボードゲーム先進国という立ち位置によって保証されてきた側面がある。しかし、時代の変化が進めばいずれはスカウトアクションもドイツローカルな人気投票に成り果ててしまうのかもしれない。どこぞの国の○○ゲーム大賞みたいなもんだ。

 とまあ、個人的な失望から無駄に話を膨らませてきたけれど、結局のところゲームはやってみなきゃわからないワケで。レーティングの話をするなら2012年のツォルキンなんか2.13の7位だし、実際スカウトアクションが正しかったのかそうじゃないのか、それを確かめるのは自分自身だ。駿馬の群れから何が飛び出てくるのか一番ワクワクするシーズンはこれからだし、幸いなことに今回上位入賞したゲームはほぼHJが国内流通を手掛けることになるだろう。やきもきする心配は薄い。
 かくいうぼくもモンバサを遊びたいのでできれば秋ゲムマに間に合わせて欲しい…… と言ってもぼくは秋ゲムマでは出展側なのでスピード勝負になるとまず買えないんだけど……

 あと、ぼくの見る目のなさから考えるとラグランハは傑作なんだと思います。誰か遊ばせて下さい。
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[ 2015年10月12日 23:15 ] ゲーム賞 | TB(0) | CM(3)
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